静的ストレッチについて考える。
今回は、前回のウォーミングアップに続いて、その中でも静的ストレッチについて考えていきます。
近年、運動前の静的ストレッチ(スタティックストレッチ)がその後のパフォーマンスを落とすのではないかという情報の記事が多くみられるようになりました。
ウォーミングアップで静的ストレッチを行なっていないチームも増えてきたのではないでしょうか?
そこで、スタティックストレッチをすることでどのような影響があるのか考えていきたいと思います。
まず、静的ストレッチ(スタティックストレッチ)とは?
⇨反動を使わずに一定時間静止したまま同じ部位を伸ばすようなストレッチです。下の写真などは一般的に馴染みのあるところでしょうか。文献では、スタティックストレッチを6秒間と30秒間それぞれ行い、ストレッチ後の関節可動域と筋出力にどのような影響が出るのかを調べています。
スタティックストレッチの伸張時間が6秒間では関節可動域は拡大しないものの筋出力は向上し,30秒間では関節可動域は拡大したものの筋出力は低下したと報告されています。
また、スタティックストレッチについて関節可動域向上に関して効果があるとされるのは少なくとも約30秒~120秒で、それよりも短い場合効果が得られない可能性があると報告されています。
これらを考慮するとスタティックストレッチの伸張時間の違いによって得られる効果が変わってくるということです。
運動前のスタティックストレッチは、どのように行っていくのか?
それ以外の自宅でのストレッチはどのように行っていくのか?
また、運動前の長時間の静的ストレッチは筋出力に悪影響かもしれませんが、特異な競技種目によっては筋出力よりも競技技術を実施するために関節可動域の向上が必要かもしれません。この場合は、上記の継続時間を考慮しながら運動前の静的ストレッチを行うという選択もできると考えられます。
これらから、目的や用途に合わせて伸張時間を選択する必要性があるといえるでしょう。
一般的には、
ウォーミングアップに静的ストレッチを行う場合には短時間でのストレッチ。
そして、筋出力を低下させず、可動域を向上させる動的ストレッチ(動的ストレッチの効果についてはまたの機会に)。
普段の柔軟性のトレーニングとしては静的ストレッチが効果的です。
運動をする機会も増えてくると思います。効果的なストレッチを実施してみてください。
参考文献
Kay AD, Blazevich AJ. Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review. Med Sci Sports Exerc 44: 154-164, 2012. 26)
スタティックストレッチングが腓腹筋筋腱複合体の筋力及びスティフネスに及ぼす影響の検討:異なるストレッチング時間と反復回数を用いた検討 中村雅俊,池添冬芽, 西下智, 梅原潤, 市橋則明. 体力科学 第66巻 第2号 163-168(2017)
Behm DG, Chaouachi A. A review of the acute effects of static and dynamic stretching on performance. Eur J Appl Physiol 111: 2633-2651, 2011.
Simic L, Sarabon N, Markovic G. Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scand J Med Sci Sports 23: 131-148, 2013. 32)
短時間の静的ストレッチングが柔軟性および筋出力に及ぼす影響
谷澤真, 飛永敬志, 伊藤俊一. 理学療法―臨床・研究・教育 21:51-55,2014.